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もちろん紹介する商品はすべて7inchismが責任を持って聞いたり読んだり見たり遊んだりした、「体験談」。

<PICK UP 029>
[book]"「ヤーディ」




今回は、仁義無きジャマイカンギャングスター小説「ヤーディ」をpickup!

ジャマイカからロンドンへ渡り、すったもんだしながら 成り上がるヤーディ(ジャマイカ人)の姿を描いた本作、 読み終わって一番最初に思ったことは、

「自分はこの物語にどれくらい共感できただろうか?」

という疑問でした。

普通、仁義なき戦い系の本を読んだ後って、 主人公になりきり肩で風切って歩きたくなるものですが、 僕はそんな気分になりませんでした。

理由は、「ドラッグを使って成り上がる」という要素がすごーく強く、なんというか、「おなか一杯」になっちゃったんです。

ここに、最初の疑問のポイントがありそうです。

全身に血がめぐるのをふつふつと感じる予感のするあなた。 生まれた場所と時間によっては、ギャングスターとして成功するかも知れません。

ちょっと引いちゃう予感のするあなた。 僕たちギャングスターにはなれなさそうです。違う道探しましょう。

要は、この小説に感情移入できるかどうかは、 自分の中にどれだけギャングスターの成分があるかってことですね。

「じゃあ、見どころなかったの?」と言われれば答えはノー。

例えば、「ジャマイカの性」でもご紹介した 「ジャマイカの男性像」がここでも炸裂。 とっかえひっかえ彼女替えるわ、それが普通な感じで描かれるのがすごい。

日本的な任侠物語の「義理人情」に当たる部分が、 この小説では「愛情」なんですね。
作品の中でも、異性への愛はもちろん 子どもへの愛、兄弟への愛、家族への愛と、「愛」がよく出てきます。

あと、ゲットーのスーパーマンの活躍を見る爽快感。 やっぱりギャングスター小説の醍醐味です。

そして、なんだかんだいっても後引く読後感。どこかの街の、あやしーい路地裏に迷い込んでしまったときに感じる高揚感。そんな熱にうなされる感覚が、この本にはあります。


オリジナルの出版は1993年。本作その後シリーズ化されているらしく、 続編の日本語化も待たれます。

夏本番前この季節、公園で本作読みながら 「ギャングスターの生きる道」に思いをめぐらせてみては?

<text:tooyoo>







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